航空英語
航空英語(こうくうえいご、英語: Aviation English)は、民間航空における事実上(デ・ファクト)の国際言語。パイロットや航空管制官など航空関係業務に従事する専門職が共通語として用いる[1]。
概要
[編集]1951年、国際民間航空機関 (ICAO) は、国際民間航空条約(シカゴ条約)付属書10 (Vol I, 5.2.1.1.2) 航空通信 (Aeronautical Telecommunications Vol.1-5) において、「国際的な航空無線のコミュニケーション」においては、広く英語が用いられるべきであると勧告した[2]。これは強制力のない勧告であったが、航空業界では広く英語が用いられるようになった。
しかし、583人が死亡した1977年のテネリフェ空港地上衝突事故や、349人が死亡した1996年のニューデリー空中衝突事故など、英語でのコミュニケーションの問題から事故に至る事例が発生し続けた。ICAO は「コミュニケーション、あるいは、その欠如が、多くの事故調査において、重要な原因として提示されてきた」ことを認めている[2]。2003年ICAO は「シカゴ条約付属書への新たな追加事項を発表し、国際的業務に従事する航空関係者に、一定水準の英語運用能力の実地証明を求める」こととした[2]。
航空英語は特定の目的のための英語 (ESP) であり口語の英語とは異なる用法が用いられる[3]。例えば、直前に述べたことを言い換える場合(換語)には必ず訂正を意味する「correction」を発話しなければならない。肯定・否定は「Yes」「No」ではなく、「Affirm (Affirmative)」「Negative」を用いなくてはならない[4]。
また、無線通信における聞き間違いを防止するため、フォネティックコードを使用する。"B as in Bravo"、Vを伝達するため"V as in Victor"などと標準的な語の頭文字で伝達する。標準的な語はICAOから公式に発表されているが、各国の言語事情や他の航空関係の用語との混同防止から、別の表現を用いる場合がある。例えば標準ではDは"D as in Delta"」だが、アメリカではデルタ航空のコールサインであることから別の語が用いられる。
標準化された言い回しが必要であることから航空英語試験が行なわれる。こうした試験はICAOではなく各国の機関が実施している。
試験
[編集]航空英語の技能認定の標準化として、 イギリスのTest of English for Aviation (TEA)[5]や欧州航空航法安全機構が実施する ELPAC (English Language Proficiency for Aeronautical Communication) などが確立・実施されている[6]。
日本国において
[編集]航空法第四章第三十三条の定めにより、日本国と外国との間を航空機で運行をする際は航空英語能力証明を受ける必要がある。国土交通省令が定めるその他の運航についても、航空英語能力証明が必要になる[7]。
また、航空無線通信士の試験では航空英語ではなく一般的な英語で航空に関する出題がある。
脚注
[編集]- ↑ Aviation English: A lingua franca for pilots and air traffic controllers. Routledge. (2016年1月18日). ISBN 978-1138022386
- 1 2 3 “Status of English Language Standard for Use in Civil Aviation”. International Civil Aviation Organization (2003年4月). 2013年11月8日閲覧。
- ↑ 浦野靖弘. “航空英語能力証明制度の導入について” (PDF). 日本航空機操縦士協会. 2016年3月22日閲覧。 - 初出は、航空振興財団発行(航空振興 No.99 夏季号)掲載
- ↑ 管制官とパイロットは「YES」「NO」を使わない その「ユニーク」な英語とは、乗りものニュース
- ↑ TEST OF ENGLISH FOR AVIATION (T.E.A.) Mayflower College
- ↑ ELPAC, English Language Proficiency for Aeronautical Communication European Organisation for the Safety of Air Navigation
- ↑ “航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)”. e-Gov法令検索. 2022年12月3日閲覧。
関連項目
[編集]- 無線用語
- ザグレブ空中衝突事故 - 航空管制官が航空英語でなく母国語で交信した結果発生した。