マスチゴアメーバ科
| マスチゴアメーバ科 | |||||||||||||||||||||
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| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Mastigamoebidae Goldschmidt, 1907[3] | |||||||||||||||||||||
| 下位分類 | |||||||||||||||||||||
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マスチゴアメーバ科(マスチゴアメーバか、学名: Mastigamoebidae)は、アメーボゾア門のアーケアメーバ綱ペロミクサ目[注 1]に分類される科の1つである。いずれも典型的なミトコンドリアを欠く嫌気性単細胞生物であり、1本鞭毛性のアメーバ鞭毛虫(図1上)または鞭毛を欠くアメーバ(図1下)である。底泥中などに自由生活するものと、動物の消化管内に生育するものがおり、ヨードアメーバや小形アメーバはヒトの消化管に片利共生する。確実なものとしては5属が知られ、これを2亜科にに分けることが提唱されている。
特徴
[編集]単細胞性でアメーバ運動をする鞭毛虫(アメーバ鞭毛虫; 図1上, 2a)、または鞭毛を欠くアメーバ(図1下, 2b)である[4][5]。ただし、アメーバ鞭毛虫であるものは、鞭毛を失ってアメーバになることがある[4]。また、鞭毛細胞やアメーバ細胞は、細胞壁で囲まれたシストを形成することがある[4][5](図2b)。二分裂や多分裂によって増殖する[6]。
アメーバ鞭毛虫は1本鞭毛性であり、基本的に細胞頂端から前方へ伸びる1本の長い鞭毛をもつ[4][5][7][6](図1上, 2a)。鞭毛は、通常の9+2構造をもつが、ダイニン外腕を欠き、鞭毛運動はゆっくりで一様に波打つ[4][5][6]。基質上を匍匐、または水中を遊泳する[4][5][6][7]。鞭毛移行部(基底小体と鞭毛の移行部)には、シリンダー状構造が存在する[4]。基底小体は鞭毛につながる1個(鞭毛基部)のみであり、これに付随する基底小体はない[4]。基底小体を構成する微小管はふつう3連管だが、一部の種では2連管[4]。基底小体から多数の微小管からなる円錐状または円筒状の構造が生じており、ふつうこれを介して核と連結している[4][5]。基底小体の側方から後方へ微小管性鞭毛根(microtubukar root)が伸びており、その上面には層状構造(bilaminar root sheet)が付随している[4]。
アメーバ細胞は、ふつう幅広い単一の葉状仮足を噴出状に形成する[4](図1下, 2b)。仮足の先端にはしばしば透明冠が形成されるが、内質と外質の区分が不明瞭なこともある[4][8]。仮足が分岐したり、複数の仮足を形成することもある[4][5][6]。
明瞭な細胞外被は存在しないが、細胞外共生細菌に覆われている例もある(Mastigamoeba aspera)[4]。基本的には単核性であるが、多核性の場合がある[4][6]。閉鎖型(核膜が残存する)および開放型(核膜が消失する)の核分裂が報告されている[6]。典型的なミトコンドリアを欠くが、調査されたものでは縮退したミトコンドリア由来の細胞小器官(MRO, mitochondrion-related organelle)が見つかっている[4]。Mastigamoeba balamuthi のMROは水素分子とATPを産生するためハイドロジェノソームとよばれるが、クエン酸回路や電子伝達系の一部をもつことから、より祖先的な特徴を残した水素産生型のミトコンドリアである可能性がある[9][10]。典型的なゴルジ体は存在しない[9][4][5]。ペルオキシソームを欠くとされていたが、Mastigamoeba balamuthi において嫌気的なペルオキシソームの存在が示されている[11]。1個から数個の収縮胞をもつことがある[6]。
生態
[編集]多くは、海水、淡水、土壌の微好気的または嫌気的環境に自由生活する[4][5][6]。ヒトなど動物の消化管内に共生(寄生を含む)する種もいる(ヨードアメーバ、小形アメーバなど)[4]。また、同じアーケアメーバ綱に属する大型アメーバであるペロミクサに細胞内共生するマスチゴアメーバが報告されている[4][7]。多くは運動が緩慢である[5]。細菌や藻類、デトリタスを摂食し、また可溶性有機物を吸収する[6]。
分類
[編集]上位分類
[編集]マスチゴアメーバ属(Mastigamoeba)やそれに類似した鞭毛虫(Mastigina, Mastigella)はマスチゴアメーバ科にまとめられ、古典的には原生動物の鞭毛虫亜門動物性鞭毛虫綱根鞭毛虫目などに分類されていた[12][13]。やがて微細構造学的研究などに基づき、マスチゴアメーバ科はペロミクサ属に近縁であると考えられるようになり、まとめてペロミクサ目(Pelobiontida)に分類されるようになった[5][14][15](このまとまりに対してマスチゴアメーバ目 Mastigamoebida の名を用いている例もある[1][2])。
マスチゴアメーバ科を含むペロミクサ目の生物はミトコンドリアを欠き、20世紀後半には、しばしば原始的な(最初期に分岐した)真核生物であると考えられていた[16]。トーマス・キャバリエ=スミスはこのような考えを推し進め、1983年にアーケゾア仮説(ミトコンドリアを欠く真核生物はミトコンドリアを獲得する前に分岐した生物とする仮説)を提唱し、その際にアーケアメーバ門(Archamoebae)を設立し、その中にペロミクサ目を分類した[17]。しかし、その後の研究で、ミトコンドリアを欠く真核生物はミトコンドリアが二次的に縮退したものであると考えられるようになり、マスチゴアメーバ科を含むペロミクサ目はアメーボゾア門に含めるようになり[18]、またその中でアーケアメーバ綱に分類されるようになった[4][19][20]。
下位分類
[編集]2025年時点で、マスチゴアメーバ科に分類される確実な属としてはマスチゴアメーバ属(Mastigamoeba)、Paramastigamoeba、Seravinia、エンドリマックス属(Endolimax)、ヨードアメーバ属(Iadamoeba)の5属が知られている[21]。Paramastigamoeba と Seravinia は、2023年にマスチゴアメーバ属から分離して新設された属である[21]。また、マスチゴアメーバ属に類似した生物として、マスチゲラ属(Mastigella)、マスチギナ属(Mastigina)、Tricholimax がある。
マスチゲラ属(Mastigella)はマスチゴアメーバ属と同様に1本鞭毛性のアメーバ鞭毛虫であるが、鞭毛基部と核は結合しておらず、細胞は明瞭な表層域をもつ[5][6]。マスチゴアメーバ属と分けられないとされたこともあるが[5]、分子系統学的研究において、マスチゲラ属とされる生物はマスチゴアメーバ科ではなくペロミクサ科に属することが示されている[21][22](下図3)。
マスチギナ属(Mastigina)はマスチゴアメーバ属と同様に核と連結した核をもつアメーバ鞭毛虫であるが、単仮足性であり顕著な原形質流動を示す[4][5][6]。単核性から複数の核をもち、複数の鞭毛をもつこともある>[5]< [6]。自由生活性またはヒキガエルの消化管に片利共生する[5]。マスチゴアメーバ属に類似するが、一般的にはペロミクサ科に分類され[5][6]、また分子情報が得られていないためその分類学的位置は明らかではない[4]。
マスチギナ属と混同されてきた生物として Tricholimax がある[4]。Tricholimax は両生類の消化管に生育する大型(50–135 μm)で1本鞭毛性(典型的な9+2構造を欠く)の単仮足アメーバ鞭毛虫であり、活発な原形質流動を示し、1–6核を有し、鞭毛基部は微小管構造によって1個の核と連絡している[4]。独立の科(Tricholimacidae Cavalier-Smith, 2013)に分類されることもあるが、分子情報がなく、その分類学的位置は明らかではない[4]。
Phreatamoeba は鞭毛虫期と鞭毛を欠くアメーバ期をもつことから新設された属であり[23]、独立の目(Phreatamoebida Cavalier-Smith, 1991)や科(Phreatomoebidae Cavalier-Smith, 1991)に分類されたこともあるが[1]、マスチゴアメーバ属にも同様な特徴をもつものがいることからマスチゴアメーバ属に含めることが提唱され[5]、このことは分子系統解析からも支持されている[21]。また、Dinamoeba に関しては記載が不十分であるが、マスチゴアメーバ属と同一と考えられている[5]。
エンドリマックス属(Endolimax)とヨードアメーバ属(Iadamoeba)は鞭毛を欠くアメーバであり、ふつうエントアメーバ属とともにエントアメーバ科に分類されていた[4][24][25]。しかし分子系統解析から、これら2属はエントアメーバ属と同じくアーケアメーバ綱に属するものの、その中ではエントアメーバ属と系統的に離れており、アーケアメーバ属に近縁であることが明らかとなった[26][7]。そのため、この2属はエントアメーバ科から除かれ、当初は独自の科であるエンドリマックス科(Endolimacidae)に移された[4][19]。その後、これら2属は系統的にマスチゴアメーバ属(旧義)の中に含まれることが示され、マスチゴアメーバ科に移された[7][4]。エンドリマックス属とヨードアメーバ属は単系統群を形成し、前者は側系統であることが示唆されている[21]。また、このことはアーケアメーバ綱の中で鞭毛の欠失が少なくとも2回独立に起こったことを示している。
上記のように、旧義のマスチゴアメーバ属は系統的にエンドリマックス属とヨードアメーバ属を含む側系統群であることが示され、2つの系統群、AとB(エンドリマックス属とヨードアメーバ属は後者に含まれる)が認識されていた[7]。その後、マスチゴアメーバ属のタイプ種である Mastigamoeba aspera が調査され、これが系統群Aに属することが示されたため、系統群Aを狭義のマスチゴアメーバ属とすることが提唱された[21]。系統群Bの中で旧マスチゴアメーバ属の生物はエンドリマックス属+ヨードアメーバ属に対して側系統群であることが示唆され、Paramastigamoeba と Seravinia の2属に分けることが提唱されている[21](下図3)。系統群AとBは、鞭毛装置など形態的に差異があることが示されている[21]。また、系統群AとBは、別亜科(Mastigamoebinae, Seraviniinae)として分けることが提唱されている[21]。
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| 3. アーケアメーバ綱内の系統仮説[21][26][22] |
表1. マスチゴアメーバ科の分類体系の一例[4][26][21][1][27]
- アメーボゾア門 Amoebozoa Lühe, 1913 emend. Cavalier-Smith, 1998
- アーケアメーバ綱 Archamoebae Cavalier-Smith, 1983
- ペロミクサ目 Pelobiontida Page, 1976[注 1]
- マスチゴアメーバ科 Mastigamoebidae Goldschmidt, 1907
- シノニム: Phreatamoebidae Cavalier-Smith, 1991; Endolimacidae Cavalier-Smith, 2004
- 単鞭毛性アメーバ鞭毛虫または鞭毛を欠くアメーバ、基本的に単核であるが多核のこともある。鞭毛は運動し、鞭毛基部は核と連絡している。アメーバは扁平で運動は遅い。自由生活性または動物の腸管に共生する。
- マスチゴアメーバ亜科 Mastigamoebinae Goldschmidt, 1907
- マスチゴアメーバ属 Mastigamoeba Schulze, 1875
- 亜科 Seraviniinae Chistyakova et al., 2023
- 単鞭毛性のアメーバ鞭毛虫または鞭毛を欠くアメーバ、鞭毛基部から生じた微小管は円柱状構造を形成して下に伸びる。
- 属 Paramastigamoeba Chistyakova et al., 2023
- 単鞭毛性のアメーバ鞭毛虫。Paramastigamoeba lenta のみが知られる。
- 属 Seravinia Chistyakova et al., 2023
- 単鞭毛性のアメーバ鞭毛虫、基本的に単核性。3種ほどが知られる。
- エンドリマックス属 Endolimax Kuenen & Swellengrebel, 1917
- 鞭毛を欠くアメーバ。単一の大きな核小体をもち、核中央や核膜に沿って存在する。核膜に沿ったヘテロクロマチンは存在しない。シストは休憩から不定形、1–8核を含む。脊椎動物や昆虫の消化管内に共生する。共生関係は一般的に片利共生であるが、Endolimax piscium は魚類の筋肉組織に病害をもたらすことが報告されている。小形アメーバ(Endolimax nana)など20種ほどが記載されている。分子系統解析からは、ヨードアメーバ属に対して側系統であることが示唆されている。
- ヨードアメーバ属 Iadamoeba Dobell, 1919
- 鞭毛を欠くアメーバ。核小体は大きく、核中央付近に位置する。シストには大きなグリコーゲン塊が存在する。脊椎動物(哺乳類、爬虫類)の消化管内に共生する。ヨードアメーバ(Iadamoeba buetschlii)など数種が記載されている。
- マスチゴアメーバ科 Mastigamoebidae Goldschmidt, 1907
- ペロミクサ目 Pelobiontida Page, 1976[注 1]
- アーケアメーバ綱 Archamoebae Cavalier-Smith, 1983
脚注
[編集]注釈
[編集]- 1 2 3 マスチゴアメーバ目(Mastigamoebida Frenzel, 1892)に分類することもある[1][2]。
- ↑ (3, 4) Mastigamoeba longifilum, (16) M. radicula, (17, 18) M. polyvacuolata
出典
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外部リンク
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