
生成AI × セマンティックレイヤーは「鬼に金棒」? Looker User Meetup #4 参加レポート
ソリューション本部 リサーチ&データサイエンス部 のK.Gです。
Google Cloud 公式ユーザー会 Jagu'e'rのオープンイベント「Looker User Meetup Part 4(データ利活用分科会 #29)」へ参加しました。
今回のメインテーマは、生成AIの普及に伴い急速に注目を集めている「セマンティックレイヤー」です。
イベント概要
主催:Jagu'e'r データ利活用分科会
イベント名:Looker User Meetup Part4
テーマ:セマンティックレイヤー、会話分析
会場:Google 渋谷オフィス
LT登壇者:Google Cloud Japan 山本様(https://x.com/yoshitake_l), Iret 山田様(https://x.com/ymd65536)
セッション1:Google Cloud Japan 山本様
テーマ:セマンティックレイヤーと会話分析
1.そもそも「セマンティックレイヤー」とは?
一言で言うと、BIツール/データ分析で用いる「ビジネス指標」と、その材料になる「データ」を橋渡しする存在です。
BIツール/データ分析で用いる「ビジネス指標」と、その材料になる「データ」を橋渡しする存在
Looker においては、LookML がこの役割を担う
普段Lookerを使用しているだけだと「セマンティックレイヤー」という言葉自体は出てこない
BIツールとしてのLookerはセマンティックレイヤーを前提として動作する

2.セマンティックレイヤーが注目されている理由
2025年に入り、「Semantic Layer」の検索数が世界的に急上昇しています。 Googleトレンドの推移を見ると、その傾向は明らかです。
この背景にあるのが、生成AIの爆発的な普及です。 AIがデータを正しく解釈するための「辞書(コンテキスト)」として、今改めてセマンティックレイヤーの価値が見直されています。

3. セマンティックレイヤーが担う5つの役割
では、Lookerにおけるセマンティックレイヤー(LookML)は具体的に何を行っているのでしょうか。山本様の解説では、主に以下の5つの機能が挙げられました。
メジャー定義の管理: 「売上」や「利益率」といった指標の計算ロジックを一箇所で定義・統一する。これにより、部署ごとに計算方法が異なるといった「数字の定義揺れ」を防ぐ。
テーブル結合の自動化:分析に必要なテーブル同士の結合(Join)を事前に定義する。IDのマッチングや、内部結合(Inner)/左外部結合(Left)の制御をユーザーが意識する必要がなくなる。
ディメンション作成 :「年齢」データから「20代・30代」といった年代区分を作成したり、「ロイヤルユーザーフラグ」を立てたりと、ビジネスで使いやすい切り口(ディメンション)を生成する。
効率的なSQL生成: Lookerが最適なSQLを自動生成するため、無駄なクエリの発行を抑え、BigQueryなどのコンピュートコスト削減にも寄与する。
権限管理:「人事データは特定部署のみ閲覧可能」といった、行レベル・列レベルでの細やかなアクセス制御を実現出来る。
4. 生成AI × セマンティックレイヤーは「鬼に金棒」
セッションの中で特に印象的だったのが、「セマンティックレイヤーと生成AIは『鬼に金棒』の関係にある」という内容です。
生成AIに自然言語で「各店舗の月次売上を出して」と指示した際、セマンティックレイヤーが存在することで、AIは定義された指標(辞書)を参照して正確なSQLを生成できます。現在プレビュー中のLooker会話分析(Conversational Analytics)は、まさにこの仕組みを体現した機能です。

これにより、SQLが書けないユーザーや、たまにしか分析ツールを使わない層でも、迷うことなくデータにアクセスできるようになります。
5. 実演:会話分析の柔軟性
デモでは、実際の会話分析の流れが紹介されました。非常に柔軟な対話が可能であることがわかります。
曖昧な質問への対応: 「人気の商品ランキングを作って」というざっくりとした指示に対し、システム側が「人気=売上合計」と解釈し、自動的にランキングを作成。
フィルタの追加: 「今年のデータに絞って」と指示するだけで、日付フィルタが自動適用される。
可視化の変更: 「横棒グラフにして」と言えば、GUI操作なしでグラフ形式が変更される。
BigQueryの「Gemini in BigQuery(チャットSQL)」との違い
よく比較されるGemini in BigQueryとの違いについても解説がありました。
BigQueryがエンジニア向けに「SQL生成」を支援するのに対し、Lookerの会話分析は一般ビジネスユーザー向けに「信頼できる定義に基づいた回答」を返す点に大きな違いがある、というお話でした。
理論から実践へ
生成AI時代のデータ活用において、セマンティックレイヤーが「AIへのコンテキスト提供」という重要な役割を果たすことがよく理解できました。では、これを実際の現場に導入するとどうなるのでしょうか?
続いてのセッションでは、そのリアルな実践事例、効果が語られました。
セッション2:Iret 山田様
テーマ:セマンティックレイヤーの構築実践
続いて、Iret 山田様より、実際にセマンティックレイヤーの導入を行った事例、振り返りが紹介されました。
1. 分析基盤の変遷:Looker単体から「セマンティックレイヤー」へ
発表では、過去から現在に至るまでのIret 様の分析環境の進化が、苦労話を交えて紹介されました。
フェーズ1:Looker中心の時代
当初はLookerを中心に据え、オウンドメディア等での情報発信を行っていました。
しかし、データ量が増加するにつれ、「Looker単体での処理負荷が高い」「部署間でのスムーズなデータ連携が難しい」といった課題が浮き彫りになってきました。
フェーズ2:セマンティックレイヤーの構築
そこで導入されたのが、今回のテーマである「セマンティックレイヤー」です。
2021年からデータ基盤の再整理を行い、2023年以降、本格的にこのレイヤーを構築。
これは、前セッションで解説された「ビジネス指標とデータを橋渡しする層」を、実際の運用現場に実装した事例と言えます。
2. 導入効果:分析サイクルの劇的な高速化
セマンティックレイヤーの導入前と導入後で、分析環境はどう変わったのでしょうか。山田様は以下の3点を挙げていました。
可視化速度の向上 以前は数分~十数分かかっていたデータの表示が、ほぼリアルタイムで可能になった。
部署間分析の円滑化 データの定義が整備されたことで、異なる部署間でも共通の指標で会話ができるようになり、横断的な分析が容易になった。
運用改善サイクルの短縮 これが最大の成果と言えます。可視化と分析のスピードが上がったことで、運用のボトルネックを発見し改善するまでのサイクルが、従来の「数週間単位」から「数日単位」へと劇的に短縮された。
セッションの示唆:設計の重要性
山田様の発表は、ツールを入れるだけでなく、適切な「レイヤー(層)」を設計・構築することが、実務における分析効率を左右するという示唆の強い実例でした。 今後はさらなる自動化や、Looker Studioなどの新規ツールも組み合わせた高度な可視化を目指していくとのことです。
まとめと感想
本イベントを通じて、「セマンティックレイヤーこそが、生成AI時代のデータ活用の鍵である」という点を強く感じました。
単にAIにコードを書かせるだけでなく、ビジネスの文脈(セマンティクス)を理解させた上でデータを抽出する。Looker の会話分析は、データガバナンスを効かせながら、誰もがデータを武器にできる未来を予感させる内容でした。
また、今回はGoogle Cloud Japanの方々のご厚意で、Google Cafeにてランチの席を設けていただきました。

素敵なランチを囲みながら、Google Cloudの方々や他の参加者とリラックスした雰囲気で情報交換ができ、セッション外でも非常に多くの刺激をいただくことができました。
中の人視点、ユーザー企業視点の双方から、最先端の「データ分析 × AI活用」について深く語り合える貴重な場でした。 登壇者のみなさま、 Jagu'e'r データ利活用分科会のみなさま、Google Cloud Japan のみなさま、ありがとうございました!